◆2022年2月の聴きどころ

オルガニスト・教育者

セザール・フランク今年、生誕200年の記念の年を迎えるセザール・フランク(1822-1890年)は、ベルギーで生まれたフランクはパリで活躍し、ヴァイオリンソナタや交響曲、「天使の糧」などで知られています。しかし、最も充実しているのは「3つのコラール」などのオルガン曲であり、パリ・サンクロチルド教会のオルガニストとして、19世紀パリを代表するオルガン音楽を残しました。

また、パリ音楽院のオルガンと作曲の教授として教育活動でも足跡を残し、特にバッハの分析・研究などの授業は、それまでのパリ音楽院にはないものでした。そして、ヴァンサン・ダンディなどの門下生は保守的な「フランキスト」と呼ばれ、ドビュッシーなどの革新的な動きに対抗した、とされています。しかし、20世紀初頭の最も優れたオルガニストであり、オルガン曲を残したノートルダム大聖堂のヴィエルヌやサンクロチルド教会の後継者トゥルヌミールなどを育成した功績は日本の一般音楽史ではあまり語られることはありません。

◆19世紀以降のパリのオルガンと音楽事情

この一般音楽史では語られることの少ないオルガニストの系譜は、19世紀以降のパリの音楽事情にとって核心部分であり、フランクに限らず名のある作曲家たちは各教会のオルガニストを務めており、同時にパリ音楽院や作曲家として重要な役割を担っていました。それは現代に至るまで継承されており、ノートルダム大聖堂ヴィドール/ヴィエルヌ、サンシュルピス教会(ヴィドール/デュプレ)、マドレーヌ教会(サンサーンス/フォーレなど)、サントリニテ教会(ギルマン/メシアン)、サンクロチルド教会(フランク/デュボア/トゥルヌミール/ラングレー)など脈々とその伝統を継承し、血族のように互いにつながっているのです。

◆フランクと名工カヴァイエ=コル

これら19世紀パリのオルガン音楽の発展をもたらしたのは、名工カヴァイエ=コル製作のオルガンでした。そのオルガンのスタイルはシンフォニックオルガンとも呼ばれ、その響きはロマン派の大規模オーケストラのような豊かさと力強さを持つものでした。パリのほとんどの教会のオルガンは、この時代にカヴァイエ=コルによって新築または大規模な増改築を施され、オルガニスト達は「オルガン交響曲」など、その響きを生かした作品を残したのです。フランクも基本的にはその響きを活かしながら、ほぼ常に「オーボエ」の音を一貫して使用することで、ややリードオルガンに近い独特な響きを特徴としています。

◆チャペルプリエールのオルガンで聴くフランク

 日本にも様々なパイプオルガンがありますが、バロック風の優れた楽器はあっても、カヴァイエ=コルの響きを再現できているものが少ないのが実情です。しかし、チャペルプリエールのケルン・オルガンはカヴァイエ=コルのノウハウを生かした部分が多く持ち、ブルゴーニュ産の石材とゴシック様式の空間により、最もフランス19世紀の音楽を聴く最高の響きを作り上げています。特にこのオルガンの「オーボエ」の美しい音色は、フランクらしい響き再現するに相応しい名器ということができるでしょう。2月はフランクと、フランクが尊敬してやまなかったバッハの作品を、このチャペルプリエールという最高の音楽時空でご堪能下さい。

【予告動画】池田泉オルガンリサイタルーフランク生誕200年Ⅰ -バッハへの畏敬-

2022年2月12日(土)16:30開催!

博多駅前とは思えない異次元の大聖堂チャペルプリエールでのコンサートシリーズ。 2022年は、セザール・フランクのアニーバーサリーイヤー。 世界的に活躍する専属オルガニスト 池田 泉の バッハとフランクの名曲によるオルガンリサイタルをお愉しみください。